燃料ポンプ突然死
エンジンを始動しようとしたところ、勢いよくクランキングはするものの初爆も全く起こらない。
前回車に乗ったのは約2週間前、この2週間の間に何らかの問題が起こったということです。
イグニッションONで燃料ポンプリレーからカチッという音は聞こえるのでポンプを制御する側の動きは問題なし。
しかしいつもはリレー動作と同時に聞こえていたポンプ動作音(イグニッションON後に2秒通電する仕様)が聞こえませんでした。
この時点でポンプ故障の可能性が高くなっていたのですが、一応、その他の可能性も探るため、メインリレーとレジスタのチェックをしました。
燃料ポンプリレーへの供給電源はメインリレーでスイッチングされているため、メインリレーが故障すると燃料ポンプが動かなくなることがあります。
メインリレーは、接点側が接触不良になって、リレー動作音はするものの通電しなくなるという不具合もあるようなので、保管していた予備品に交換してみましたが改善しませんでした。
レジスタの可能性
レジスタはポンプへの給電回路内に並列接続されており、ポンプ側から分岐した配線がECUに入って低回転時のみアースに落とすスイッチングがされています。 つまり、アースに落とされる低回転時のみレジスタが有効になってポンプに給電される電流が制限されます。 この仕様から、レジスタが断線するなどの不具合が起きるとエンジン始動時もポンプに給電されません。
- レジスタのチェックは簡単で、レジスタのカプラーを抜いて2つの端子を短絡するだけです。 短絡すると低回転時もポンプに給電される電流が制限されなくなってしまいますが、エンジンはかかるので応急処置はできます。 レジスタのカプラを短絡しても改善はないので、燃料ポンプが原因であることがほぼ確定。

フューエルポンプレジスタ
ポンプの動作確認
念のためプレッシャーレギュレーター後の低圧ホースを外し、イグニッションONで燃料が出ないことも確認。
-
最後に、32番カプラで、バッテリーから直接ポンプに給電してみて全く燃料が出る様子はなかったので、ポンプの故障が確定。
ちなみに32番カプラーでポンプの端子間抵抗を測定してみると約25MΩで、ほぼ導通がない状態でした。 おそらくガソリンに浸かっているため、微妙な導通があったのだと思います。 調べてみると、ハイオクガソリンは新品の状態で数十MΩ〜数百MΩ、給油後1ヶ月放置だと酸化が進んで10MΩ〜50MΩ、水分が混入すると1MΩ〜数MΩ以下になることもあるようです。

32番カプラーでの燃料ポンプ点検
生産終了で入手不可の部品が多い
故障したのは燃料ポンプだけですが、タンクを購入するとポンプと燃料ホースがセットになっていたり、生産中止になったカットバルブ周辺のホースが付属していたりするので、タンクごと新品に換装するパターンも多いようです。
本来の初期型用燃料タンクは生産が終了し、現在は後期型のタンクが代替品となっています。
後期型のタンクの仕様は前期型と異なり、タンク両端に2つあったカットバルブが1つになりタンク中央に移動していたり、ブリーザーホースのニップルの位置が変わっていたりします。
ホース類も全て交換したかったのですが、燃料ホース以外は全て生産終了で、結局タンクしか購入することができませんでした。
交換できるものは交換しておきたいので、メーターユニットとワンウェイバルブを追加購入しました。

※ 赤色着色部品がタンクセツト,フユーエル(17013-SL0-306)に含まれる部品
No | 部品番号 | 部品名称 | 単価 | 数量 | 価格 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
4 | 17371-SM4-A02 | バルブ,ツーウエイ (TEC) | 3,610 | 1 | ||
30 | 37800-SL0-305 | メーターユニツト,フユーエル (サービスヨウ) | 8,650 | 1 | ||
赤色部 | 17013-SL0-306 | タンクセツト,フユーエル | 97,400 | 1 | ||
17 | 17651-SL0-000 | チユーブ,フイラーネツク(1991~1995年式) | 2,950 | 1 | 2022年10月生産終了 | |
17 | 17651-SL0-930 | チユーブ,フイラーネツク(1997年式) | 1,230 | 1 | 2023年01月生産終了 | |
19 | 17658-SL0-010 | チユーブASSY.,ブリーザー(1991~1995年式) | 1,573 | 1 | 2022年10月生産終了 | |
19 | 17658-SL0-930 | チユーブASSY.,ブリーザー(1997年式) | 1,353 | 1 | ||
27 | 17721-SL0-030 | チユーブ,フユーエルベント | 638 | 1 | 2023年01月生産終了 | |
25 | 17726-SL0-010 | ブラケツト,ツーウエイバルブ | 1 | 生産終了 | ||
56 | 95001-55080-30 | チユーブ,フユーエル 5.3X80 (95001-55001-60M) | 1 | 生産終了(※) |
価格は2025年03月時点
※ 95001-55080-30、95001-55110-30、95001-55135-30、95001-55325-30は、95001-55001-60M(カット使用する長さ1mの汎用ホース)に統合されたが、その統合先の95001-55001-60Mもすでに生産終了している。

17371-SM4-A02 タンクセツト,フユーエル
- 燃料タンク本体。燃料ポンプと燃料配管、カットバルブなどが付属しています。
NA1対応部品番号(17013-SL0-306)で購入すると、後期型用と値段は同じなのに給油口側のリターンホースなど、NA1と合わない部分が取り外されているだけのように見えます。
給油口側のリターンホースは後期型用の方が長く、カットしたら使えるのではないかと思いました(あくまで推測です)。 - 燃料ポンプの蓋の部分に粘着性のある物質が塗りたくられています。 防錆か絶縁が目的だと思いますが、ポンプ単体で交換する時にこのような処置はしないし、整備要領書にも特に記載がある訳でもないし、それほど重要ではないと思われます。
- メーターユニットとワンウェイバルブ。
ワンウェイバルブにつながるホース、ブラケットなどは生産終了品で購入できないため再使用します。

燃料ポンプ部防錆処理?

メーターユニットとワンウェイバルブ
給油口側のホース取り外しは慎重に
タンク本体を取り外す前に、車両との接続箇所を切り離します。
まずは室内で助手席側にある燃料ポンプ部の蓋を取り外し、蓋とハーネスを分離しておきます。
あとはホース類を外すだけですが、手が入りにくい箇所に接続部があるので面倒な作業です。
助手席側が給油口に繋がるホース2本とキャニスターにつながるホース、運転席側が燃料フィルターに繋がる高圧側燃料ホースと低圧側燃料ホースです。

給油口接続ホース取り外し
- 助手席側の給油口接続ホースの取り外し。このホースは両方とも生産終了で購入できないため、慎重に作業します。
かなり抜けにくいので、エアクリーナーボックスを取り外して作業スペースを確保した方が賢明です。 - 助手席側にあるキャニスター接続ホースの取り外し。
見ての通り簡単に抜けます。 - 運転側の高圧側燃料ホースの取り外し。
燃料フィルターのバンジョーボルトのところで切り離します。 - 運転席側の低圧側燃料ホースの取り外し。
少し奥の方にあるので手が入りにくいです。

キャニスター接続ホース取り外し

高圧側燃料ホース取り外し

低圧側燃料ホース取り外し

ガソリン抜き取り作業
- いきなりのことだったので、ガソリンが結構入っています。
燃料ゲージで半分よりもすこし少ないくらいですが、NSXの燃料タンク容量を考えると40L近くありそうです。
燃料を空にしないと、降ろすのがかなり大変なので、事前にできる限りガソリンを抜きます。
コック付のドレンプラグを準備しようと思いましたが、ドレンボルトがM12×1.5でサイズが小さく、すぐ購入できそうな商品がなかったのでそのまま作業を進めることにしました。
20Lの携行缶2缶満タン分抜けました。 - 軽くなったタンクを降ろす作業は簡単です。
タンクをひざで支えながら固定バンドのナットを緩めて途中まで降ろし、最後はタンクをジャッキで支えてバンドを完全に取り外すという感じです。
心配していたタンクの取り出しも、ジャッキスタンドの1段目の位置で余裕でした。

燃料タンク取り外し完了

前期型用燃料タンク
- 取り外した燃料タンクを確認すると、新品タンクと同じくポンプの蓋部分に粘着性のある物質が塗られています。
ポンプ単体を交換するのであれば何も塗らないと思うので、新車時からの交換歴はないのだと思います。
ちなみにメーターユニットの蓋部分も同じく塗られています。 - ポンプを取り外して端子間の抵抗値を確認。
そもそも導通がありませんでした。
珍しいケースらしいですが、ポンプが突然死してしまったようです。 - 燃料タンクの内部を確認すると、ものすごく綺麗な状態でした。ポンプの故障に錆などは全く関係なさそうです。

燃料ポンプを取り外してチェック

燃料タンク内部

前期型用燃料タンクと後期型用燃料タンクの比較
- 前期型用タンク、後期型用タンクを比較。
全体を見てすぐに分かるのがカットバルブの数です。前期型用タンクは両端に2つありますが、後期型用はタンク中央に1つだけあります。
その他にはブリーザーチューブ(給油口につながる細い方のホース)をつなぐニップルの位置が少し給油口側に寄っていることが分かります。 ニップルの位置が変わった影響で前期型用のブリーザーチューブでは長すぎるのですが、適合する部品が買えないので仕方がありません。 部品が買えないというよりは、前期型用タンクの生産終了とともに後期型用が無理やり後継部品として割り当てられ、前期型用と後期型用ではホースが合わないから設定がないという状況に思えます。 前期型用のブリーザーチューブでは取り回しもきついし、後期型用を購入しなかったのが悔やまれます。 後期型用のブリーザーチューブは単品で購入できるので、追加購入して検証してもよかったのですが、早く復旧したかったので、前期型用を流用することにしました。
- この給油口に繋がるフィラーネックチューブ(太い方)とブリーザーチューブ(細い方)生産終了になっています。 ブリーザーチューブはストレートなので汎用品で代替がききそうですが、フィラーネックチューブは形状が特殊なので汎用品での代替は難しそうです。
- 取り外した燃料タンクからホース類を移植し、新品購入した2WAYバルブを取り付けます。2WAYバルブを固定するブラケットは生産終了品なので、取り外したタンクから移植します。
- なぜかカットバルブ配管用のパイプが前期型用のままで、使用しない助手席側のカットバルブ用のパイプが存在しています。 しかも、テープで塞いでいるだけの状態なので、購入した人が好きなように処理して使用しなさい、ということなのでしょうか。そのまま使用しても実害はありませんが、気持ちの問題でゴムキャップを付けました。

フィラーネックチューブとブリーザーチューブ

後期型用タンクにホース類などを移植

使用しないカットバルブ用パイプにゴムキャップ取り付け

ボディ側の清掃(運転席側)
- 清掃後の運転席側ボディ。もう二度と燃料タンクを降ろすことはないと思い、ボディ側を徹底的に清掃しました。

ボディ側の清掃(助手席側)
- 同じく清掃後の助手席側ボディ。
取り外すより取り付ける方が大変
取り外す時はタンクの自重で簡単に抜けますが、取り付ける際はエンジンルームに繋がる両サイドの穴からホースを出しつつ持ち上げていかないといけないので少し大変です。
私は1人で作業したので、固定バンドで一番低い位置にタンクを一旦仮止めして上側に回り、ホースを引き込んで向きを調整。下側から少しタンクを上げては上側に回ってホースの取り回しの確認をするという作業を繰り返しました。
2人で上側と下側から同時にアクセスしたら作業は簡単だと思います。
燃料タンク換装後、ガソリンを入れてイグニッションオン。燃料タンク周りが全て新品になったので当然なのですが、無事復旧しました。
いきなりの燃料ポンプ故障で大変ではありましたが、ガレージの中にある時に故障したのは不幸中の幸い(むしろ幸運)と言えるのかもしれません。

燃料タンク取り付け完了