5速ミッション オーバーホール
5速MT オーバーホール

はじめに

AT→MTへの換装にあたり、中古の5速ミッションを入手しましたが、問題なく使用していたという説明であるものの、そのまま搭載するのは怖いのでオーバーホールすることにしました。

 

せっかく分解するならついでにファイナル変更やLSD交換もやりたいと思い、これまた中古でATS製の2WAYLSDとNSX-R用ファイナルを入手しました。

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ケース分離

カウンターシャフトのロック解除

まず、ミッションを縦にした状態で、頂上部にある1/2のシーリングボルトを取り外したあとにスナップリングを外してカウンターシャフトをフリーにします。

  1. 通常はプライヤーで開いてやるだけでロックが解除されてカウンターシャフトが落ちるんですが、私の場合は、リングが破損して噛み込んだ状態でした。 これは初期の5速ミッションの定番トラブルで、リングが外れてカウンターシャフトが軸方向にブレるようになって走行中にギヤが抜けるなどの症状が発生します。
    かろうじて溝にリングは残っていたものの、問題なく使用していたという説明は怪しいです。今回は幸いにも中を開けたので、換装直後にミッションブローなどという事態は防げました。
    走行距離の多いミッションは、ギヤなどに問題なくても、このリングのみは交換が必須です。
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シーリングボルトを取り外すと破損したロックリング見える

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摘出したロックリング

  1. ケースを破壊する訳にもいかなので、がんばってリングを摘出します。 少し引っ張り出してはリュータで削って細くして曲げることを繰り返してなんととか摘出しました。
  2. スピードセンサー、バックアップスイッチセンサーなどセンサー類を取り外したあと、シーリングボルト4本を外して、スプリングとスチールボールを取り外します。 スチールボールとスプリングは場所が決まっていますが、サービスマニュアルがあればどこにどれが付くか分かるので、気にせず外していきます。
  3. 次に上下ケースを固定しているボルトを全て取り外して、ケースを上に持ち上げると分離できます。
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取り外した実装部品類

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ケース分離後

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ギヤASSY取り外し
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リバースギヤ

  1. まずリバースギヤを取り外します。
    メインシャフトとカウンターシャフトとは別の背が低いギヤがリバースギヤです。
  2. メインのシフトフォークとリバースギヤのフォークを繋いでいる天秤のような部分を取り外したあと、メインシャフトを少し持ち上げてフォーク→ギヤの順で取り外します。
    ギヤは、メインシャフト、カインターシャフト、シフトフォークの一体物でないと外れないので、全体を掴んで上に引き抜きます。
    一体物のギヤを取り外したあと、最後にデフを取り外します。
  3. ほぼ全ての内部パーツを取り外した状態。
    デフは掴み所がなくて非常に持ち上げにくいのですが、純正デフはタップが切ってあるので、アイボルトなどねじ込んで掴むことができます。
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フォーク連結部品の反対側

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内部パーツを取り外した状態

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分解洗浄
  1. 取り外したパーツ類を確認。
    今回、オーバーホールついでにファイナル変更と機械式LSDへの交換を行うので、ギヤの組み換えが必要です。
    組み換えが必要なのはカウンターシャフトのみですが、組んだままで洗うだけでは洗浄液が内部に残りそうで気持ち悪いので、メインシャフトも分解します。
  2. 準備したのはNSX-R純正のカウンターシャフトとオイルポンプギヤ、ATS製の2WAYLSD。これらをクーペ純正ミッションに組み込みます。 ファイナル変更によりギヤ比がクーペの4.062からNSX-Rの4.235に変わってローギヤードに変わります。
  3. カウンターシャフトはトップ部のナットのロック部を起こして緩めます。このロックナットは41mmと大きいので、ソケットの準備が必要です(ロックナットは逆ネジになっているで時計回りに回さないと緩みません)。
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取り外したパーツ

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NSX-R用カウンターシャフト、ATS製LSD

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カウンターシャフトのロックナット(41mm)

  1. 分解したカウンターシャフト。 シャフトからギヤやベアリングを抜き取る作業には油圧プレスを使用しましたが、はまり込みは意外と弱く、手で抜けるギヤが結構ありました。
  2. 洗浄台で各パーツを洗浄。分解前は綺麗に見えましたが、シンクロスリーブの内側などは意外とスラッジがたまっています。
  3. エンジンとは違いスラッジは簡単に取れるので、一時間足らずで全ての内部パーツの洗浄が完了。
  4. ケースのクラッチ側はクラッチダストでもの凄い汚れ。
    洗浄液につけてブラシでゴシゴシこすっても固着した汚れが取れなかったので、投げ込みヒーターで洗浄液を温めて時間をおいてからさらにブラシで洗浄。
  5. 温めてはブラシでこすることを繰り返し、やっとある程度綺麗になりました。
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分解したカウンターシャフト

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各パーツの洗浄

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各パーツの洗浄完了

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ケース洗浄中(クラッチダストが凄い)

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ケースの洗浄完了

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ギヤ組み立て
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  1. ギヤをNSX-R用のカウンターシャフトに組み換え。
    メインシャフトとカウンターシャフトトップ部のベアリングはガタがある気がしたので新品を準備しました。
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  1. 分解と逆の手順で組み立てていきます。
    シャフトへの各ギヤ圧入はゆるめなので簡単に組めます。
    カウンターシャフトのロックナットは新品使用します。
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  1. サービスマニュアルを参考に各部クリアランスを測定。
    一応全て基準値内でした。
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  1. 組み立て完了。オイルポンプギヤもクーペ用からシャフトを抜き取ってNSX-R用を圧入しておきます。
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ケース組み立て
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ドライブシャフトシール交換

  1. 左右ドライブシャフト部、メインシャフト部、シフトレバー部のオイルシールは当然新品交換します。
    シフトレバー固定ボルトのスプリングワッシャーも一応再使用不可の指定があったので新品交換。
  2. LSDを組み込むといっても搭載場所に降ろすだけ。
    純正LSDと違って持つところがないので慎重に降ろします。
  3. メインシャフト、カインターシャフト、シフトフォークの一体物を取り付けたあとにリバースギヤを取り付け、オイルポンプギヤを組み込めば内部パーツの組み込みは完了です。
    ケースを被せる前に、忘れずにカウンターシャフト固定用のスナップリングを入れておきます。
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LSD組み込み

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内部パーツ組み込み完了

  1. ケースを被せる時にベアリングがケース上部に嵌まると同時にシフトフォークが噛み合わなくてはならないので、ちょっとコツがあります。 組めない時の問題は、ベアリングとケースの勘合の問題ではなくて、だいたいは3速と4速のシフトフォークの噛み合わせです。 ケースを下げた時にケース内側にフォークが当たって下がってしまうとシフトピースがうまく噛み合わないので、シンクロを微妙にズラして4速に入りにくい状態にしてケースを被せるのがポイントです。
    ケースがはまったら、上下ケースの固定ボルトを取り付けて、センサー類を固定します。
    固定ボルトは長さが2種類あって、ノックッピンと重なる部分が長い方で、ボルトを差し込むと締め込む前の高さが異なるので見た目で分かります(ノックピンの部分に短い方を差すと、明らかに締め代が少ない)。
    最後にミッションを水平より少し頭を下げるくらいまで傾けると、カウンターシャフトがズレてスナップリングにはまるので、最後にシーリングボルトを締めれば組立完了です。
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組み立て完了

5速MT オーバーホール