最終型になってパワステ制御が進化
NSXのパワステ制御部は、年式やモデルでEPSユニットの部品番号が異なっているものの、機器構成や制御方法で大きく分けると、初期型(100型~120型 NA1)、中期型(130型 NA1)、後期型(NA2以降)の3種類になります。
また、ギヤボックスは内部モーターやギアなどメカ部品は全モデル共通ですが、トルクセンサーの信号の出し方と回転センサーの有無で前期型と後期型の2種類に分けることができます。
トルクセンサーは、ステアリングを左右どちらの方向にどのくらいの力で回しているかを検出しているセンサーですが 初期型では、EPSユニットの応答速度に問題があったためか、ギヤボックスのトルクセンサー側で信号にディレイが設けられています。
一方、後期型のパワステは、EPSユニットが進化して過敏な信号変化に対応できるようになったため、ギヤボックスのトルクセンサーの信号にディレイを設ける回路がなくなっています。
トルクセンサーの制御が緻密になったことで、トルクセンサーのみで制御が行われるようになり、ギヤボックスから回転センサーが廃止されました。
後期型のパワステは、これらの変更により応答性が向上したことで、ステアリングを回した瞬間からパワーアシストが入るようになり、操作が軽く感じられるようになりました。
制御のみ後期化してフィーリング向上
配線を変更することで、トルクセンサーの信号にディレイがある前期型パワステギヤボックスのまま、後期型のEPSユニットと組み合わせることができます。
初期型のパワステは応答性の問題以外に、時速40km/hくらいで突然アシストがなくなるという問題があり、この速度は街乗りでも十分に達する速度なのでかなり違和感を感じます。
130以降の中期型になると、時速40km/hくらいで突然アシストがなくなる現象がなくなり、アシストが終わる時速80km/hくらいまで徐々にアシストが減少する自然なフィーリングに進化しました。
トルクセンサーのディレイ回路がない後期型ギヤボックスと後期型EPSユニットの組み合わせは、3世代のパワステの中では最も応答性が高く、滑らかで自然なパワーアシスト感になります。
ギヤボックスも含めて後期に換装するのがベストですが、制御系の後期型換装だけでもかなりフィーリングが良くなるとのことだったので、いつかはやりたいと思って後期型のパワステユニットを入手してストックしていました。
| 分類 | 年式 | モデル | 型式 | EPSユニット | パワーユニット | パワステギヤボックス |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 初期型 | 1991 | NSX | 100型 NA1 | 39980-SL0-013 | 53190-SL0-003 | 53601-SL0-325(※3) トルクセンサー及び 回転センサー併用 |
| 1993~1994 | NSX | 110~120型 NA1 | 39980-SL0-000 | |||
| 中期型 | 1995 | NSX NSX-T | 130型 NA1 | 39980-SL0-305 | 無し(一体型) | |
| 後期型 | 1997 | NSX・NSX-S・NSX-T | NA2(※1) | 39980-SL0-043(※2) | 無し(一体型) | 53601-SL0-040(※4) トルクセンサーのみ使用 |
| 2000~2002 | NSX・NSX-S・NSX-T | NA2(※1) | 39980-SL0-053 | |||
| 2004 | NSX・NSX-S | NA2(※1) | 39980-SL0-073 | |||
| 2004 | NSX-T | NA2(※1) | 39980-SL0-A03 |
※1 ATモデル(NA1)含む
※2 39980-SL0-053に統合
※3 旧品番:53601-SL0-000・53601-SL0-315
※4 旧品番:53601-SL0-010(1997~2001)年、53601-SL0-020(2002~2004)
後期EPSユニット 39980-SL0-053
- 入手した後期型ユニットの部品番号は「39980-SL0-053」。
選択肢として「39980-SL0-053」と「39980-SL0-073」が存在しますが、「39980-SL0-053」の方がエラーコードがシンプルで換装に向いているという情報を得ていたので、「39980-SL0-053」を入手しました。
部品番号「39980-SL0-023」のユニットは、現在の部品番号が「39980-SL0-305」である130型(中期型)の初期に採用されていたユニットですが、現在はパーツリストからも消えています。
「39980-SL0-023」がパーツリストから消えた本当の理由は定かではありませんが、純正よりも太いタイヤやグリップの良いタイヤを組んでパワーアシストの負荷が大きくなると、EPSユニット内部が故障してエラーが出るという致命的な問題があり、海外では無償交換が実施されたらしいです。
また、この問題はNA2の初期型(39980-SL0-043)まで続いたようなので、換装ベースは「39980-SL0-053」か「39980-SL0-073」が良さそうです。
T3TEC パワステ換装ハーネス T3-H-PW02
- 換装するためのハーネスについては自作も考えましたが、T3TECさんが
前期→後期パワステ換装ハーネス(品番:T3-H-PW02)open_in_new
という商品を販売してたので、自分で調べるという手段は放棄して購入しました。
ちなみにこのハーネスは、回転センサーと接続する配線は考慮されていないため、中期型EPSユニットの換装には対応していません。
私のNSXにはNSX-R用の4.2ファイナルが装着されているのですが、NSX-R用の4.2ファイナルと後期EPSユニットを組み合わせると、 メインのスピードセンサ(VSS1)とリングギヤの歯数をカウントしているNCスピードセンサ(VSS2)の信号に開きが生じ、実際の車速が100km/h付近になるとエラーでチェックランプが点灯します。
このエラーの完璧な回避方法は確立されていませんが、「警告灯はエラー発生時に点灯するが、EPSの制御停止はエンジンを再始動した時に行われる」という仕様を利用して、EPSユニットからの配線で警告灯とバックアップ電源をカットした状態にすることで、警告灯は点灯せず、パワステも問題なく使用できます。
また、初期型のMT車両にはNCスピードセンサ(VSS2)が搭載されていないため、パワステを後付けしたい場合はセンサーの増設を行う必要がありますが、上記の仕様を利用することでNCスピードセンサなしでパワステを装着することができます。
動作チェックのため仮配線で設置
- 後期型EPSユニットは前期型パワーユニットと比較して少し寸法が小さいので、下側のブラケットが異なります。
購入しようと思って注文すると納期未定の回答。一応は注文はできたので、とりあえず仮配線で換装して入荷を待つことにしました。
結局入荷まで約1年かかりましたが、現在は生産終了になっているので購入できただけ運が良かったかもしれません(おそらく私が購入したのが最終生産分だと思います)。
現在、EPSユニット自体が生産終了になっており入手困難ですが、ブラケットだけであれば、T3TECさんが販売している ブラケツトB,EPSユニツト(品番:T3R39982SL0000)open_in_new で代用できます。
前期用パワーユニットは接続が丸端子ですが、変換ハーネスに配線加工用のワンタッチコネクタが付属しているので換装作業に時間はかかりませんでした。
試乗した結果はものすごくフィーリング良好。街乗りだけでもかなり良い感じに変わるのでお勧めです。
最終的にはギヤボックスも後期型に交換したいと思っていましたが、2025年10月時点で404,800円とかなり高価な部品だったので躊躇していたところ、2026年1月の大幅値上げを受け、ハードルはさらに高くなってしまいました。
後期型のEPSユニットが生産終了になっているのも問題ですが、前期型のパワステギヤボックスも生産終了になっているため、前期型のパワステギヤボックスが壊れてしまった場合、回転センサーがない後期型のギヤボックスでは修理ができないという問題もあります。
T3TECさんでは、後期型のギヤボックスに前期型から取り外した回転センサーを移植してこのような状況に対処した事例があるようです。
読み込み中...
| No | 部品番号 | 部品名称 | 単価 | 数量 | 価格 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 53601-SL0-040 | ボツクスASSY.,パワーステアリング ギヤー | 1 | |||
| 合計金額 | ||||||
表示価格はすべて税込み価格です。
※ 単価が空欄の部品は、調査時点で生産終了または注文不可の部品です。
※ 単価が表示されている部品でも、すでに生産中止となっている場合があります。
取り外した前期型パワーユニットとEPSユニット
- 取り外した前期型パワーユニットとEPSユニット。
後期型はEPSユニットが不要になるので、配線もスッキリして軽量化にもなります。
前期型ドライバとコンピュータの部品番号
- 取り外したドライバとコンピュータの部品番号は以下の通り。
前期型パワーユニット 53190-SL0-003
前期型EPSユニット 39980-SL0-013
- 購入した後期型用ブラケット(39982-SL0-000 ブラケツトB,EPSユニツト)と前期型用ブラケットの比較してみました。
後期型のブラケットはコストダウンのためかメッキなしの無垢です。ユニット取り付け部は、一見同じように見えますが、後期型EPSユニットの方がサイズ小さいため、本体固定部から下側のネジ穴までの距離が長くなっています。 - 後期型ブラケットはステーが一か所対追加されています。
ハーネスなどの固定穴だと思われますが、そもそも前期型の車両には固定するべきものがないので、詳細は不明です。 - 後期型ブラケットは、前期型に存在した溶接ナットがなくなり、ハーネス固定用の穴が中央に移動しています。
溶接ナット部も自分の車両ではもともと固定されているものがなかったので、何を固定するためのものか分かりませんでした。
前期型ブラケット(上)と後期型ブラケット(下)の比較
後期ブラケットにはステーが追加されている
後期ブラケットには溶接ナットがない
クロメートメッキを施工した後期用ブラケット
- 後期型ブラケットは無垢で錆びそうなのが嫌だったので、前期型と同じようにクローメートメッキを施工しました。
前期型ブラケットは6価クロメートだと思いますが、現在は環境規制の影響で日本では対応する業者がほぼないので、3価クロメートを施工しています。
6価クロメートが3価クロメートに切り替わった直後は、6価クロメートのように鮮やかな金色にならず、どちらかというと金クロメートとユニクロメッキの中間のような色合いになってしまい、見た目で違いが分かっていました。
しかし現在は、皮膜の耐久性は6価クロメートに劣るものの、皮膜構造の多層化や発色剤の導入など技術的な進化により、この写真のように6価クロメートに近い鮮やかな金色の発色になってきました。
後期EPSユニットを正規の位置に固定
- ブラケットが準備できたので、正規の位置にユニットを固定しました(写真撮影時は生地貼り換えのためにダッシュボードを取り外し状態ですが、グローブボックスを取り外しただけでEPSユニットの取り付けはできます)。
私は運よく後期型ユニットに換装できましたが、EPSユニットが生産終了になっている現在、仮に中期型ユニット(39980-SL0-305)が入手できたなら、前期型パワステギヤボックスと中期型EPSユニットの組み合わせにチャレンジしてみる価値があるかも知れません。 - 純正ウーファーのブラケットの厚みは15mm。ウーファーを取り付けていない場合は、15mmのスペーサーを使用すればユニットカバーを正規の位置に固定できます。
- Amazonで売っている15mmのM6用スペーサーを使用してユニットカバーを固定しました。
純正ウーファーのブラケット厚みは15mm
15mmのスペーサを挟んでユニットカバーを取り付け
