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ECUチューン - 純正ECU ROM解析
03 純正ECU ROM解析

ATとMTで異なるカムプロフィールとECUデータの検証

NSXのATとMTではトランスミッションだけでなく、エンジンのカムプロフィールにも違いがあります。
そこで「サービスマニュアル 構造編」でバルブリフトとバルブタイミングを確認し、日本仕様の純正ROMにあるAT用とMT用のデータを比較しました。カムの違いに対して、燃料や点火時期がどのように設定されているのかを調べています。
さらに米国仕様(ACURA NSX)の純正ROMとも比較し、日本仕様と米国仕様で設定に違いがあるかも調べました。

ATとMT カムプロフィールの違い

「サービスマニュアル 構造編」にはMTとATのリフト量の違いが明確に記載されていますが、作用角とオーバーラップについては、記載されているバルブタイミング図から算出する必要があります。 これらをまとめて比較したものが下表です。
低速側では、エキゾースト側のプロフィールに違いはありませんが、インテーク側のリフト量はATの方がMTより0.3mm大きく、プライマリで約3.4%、セカンダリで約3.6%大きくなっています。
一方、VTECが作動する高速側ではその関係が逆転し、インテーク側のリフト量はMTの10.2mmに対してATは9.5mmとなり、MTを基準にするとATは約6.9%小さくなります。 さらに作用角も、インテーク側ではMTの230°に対してATは215°、エキゾースト側ではMTの225°に対してATは215°と短く、オーバーラップもMTの10°に対してATは0°となっています。

このように、低速側ではATのインテーク側リフトがわずかに大きい一方、高速側ではMTの方がリフト量、作用角、オーバーラップともに大きくなっています。
カムプロフィールだけを見れば、ATは低~中回転域、MTはVTEC作動後の高回転域をより重視した設計のように見えます。

NSX サービスマニュアル 構造編 11-13 カムシャフト バルブタイミング図

バルブタイミング図

※ 本図は「サービスマニュアル 構造編 11-13 カムシャフト」を元に作成しています。

ATとMT カムプロフィールの違い
MT AT MT比
インテーク側 低速 プライマリ リフト 8.7 mm 9.0 mm +0.3 mm
作用角 217.5° 217.5° 0°
セカンダリ リフト 8.3 mm 8.6 mm +0.3 mm
作用角 217.5° 217.5° 0°
高速 ミッド リフト 10.2 mm 9.5 mm -0.7 mm
作用角 230° 215° -15°
エキゾースト側 低速 プライマリ リフト 7.7 mm 7.7 mm 0 mm
作用角 212.5° 212.5° 0°
セカンダリ リフト 7.4 mm 7.4 mm 0 mm
作用角 212.5° 212.5° 0°
高速 ミッド リフト 9.0 mm 9.0 mm 0 mm
作用角 225° 215° -10°
オーバーラップ 低速 プライマリ 15° 15° 0°
セカンダリ 20° 20° 0°
高速 ミッド  10° 0° -10°

※ 作用角は「サービスマニュアル 構造編 11-13 カムシャフト」に記載のバルブタイミング図から開閉時期を読み取り、「作用角 = 開弁角 + 180°+ 閉弁角」として算出した値です。
社外カムメーカーの公称作用角とは測定基準が異なる可能性があるため、絶対値を直接比較することはできません。

ATとMTの燃料マップ比較

カムの仕様だけから実際のエンジン特性を断定することはできません。そこで、純正ROMのデータを比較し、ATとMTでECUの設定にどのような違いがあるかを調べてみることにしました。
日本仕様のROMデータはネット上で見つからなかったため、GRIDから購入しました。
入手したのは、AT用ECU「37820-PR7-J12」のROMデータです。TunerProで解析した結果、AT用とMT用のECUは共通のROMデータを使っていることが分かったため、今回はこのデータで比較しました。
解析には、TunerProのウェブサイトからダウンロードできる定義ファイル「Acura_NSX_and_Legend.xdf」を使用しました。
XDFで定義されている燃料マップは5種類で、それぞれが 20×16 のセル(合計320セル)で構成されています。

燃料マップ1 - 通常走行時 
FUEL MAP 1 - Part Throttle
NSX 純正ECU ROMデータ 燃料マップ1 - 通常走行時(MT)

燃料マップ1 - 通常走行時(MT)

NSX 純正ECU ROMデータ 燃料マップ1 - 通常走行時(AT)

燃料マップ1 - 通常走行時(AT)

燃料マップ2 - 通常走行・EGR作動時 
FUEL MAP 2 - Part Throttle, EGR Active
NSX 純正ECU ROMデータ 燃料マップ2 - 通常走行・EGR作動時(MT)

燃料マップ2 - 通常走行・EGR作動時(MT)

NSX 純正ECU ROMデータ 燃料マップ2 - 通常走行・EGR作動時(AT)

燃料マップ2 - 通常走行・EGR作動時(AT)

燃料マップ3 - 高負荷・全開時 
FUEL MAP 3 - Power Enrichment and WOT
NSX 純正ECU ROMデータ 燃料マップ3 - 高負荷・全開時(MT)

燃料マップ3 - 高負荷・全開時(MT)

NSX 純正ECU ROMデータ 燃料マップ3 - 高負荷・全開時(AT)

燃料マップ3 - 高負荷・全開時(AT)

燃料マップ4 - 通常走行・VTEC作動時 
FUEL MAP 4 - Part Throttle, VTEC Active
NSX 純正ECU ROMデータ 燃料マップ4 - 通常走行・VTEC作動時(MT)

燃料マップ4 - 通常走行・VTEC作動時(MT)

NSX 純正ECU ROMデータ 燃料マップ4 - 通常走行・VTEC作動時(AT)

燃料マップ4 - 通常走行・VTEC作動時(AT)

燃料マップ5 - 高負荷・全開・VTEC作動時 
FUEL MAP 5 - Power Enrichment and WOT, VTEC Active
NSX 純正ECU ROMデータ 燃料マップ5 - 高負荷・全開・VTEC作動時(MT)

燃料マップ5 - 高負荷・全開・VTEC作動時(MT)

NSX 純正ECU ROMデータ 燃料マップ5 - 高負荷・全開・VTEC作動時(AT)

燃料マップ5 - 高負荷・全開・VTEC作動時(AT)

ATとMTの燃料マップの違い

ATとMTのデータを比較すると、VTEC非作動時の「FUEL MAP 1」と「FUEL MAP 2」にも一定の違いがあり、「FUEL MAP 1」では82セル、EGR作動時の「FUEL MAP 2」では50セルが異なっています。
さらにVTEC作動時には差が大幅に増え、通常走行時の「FUEL MAP 4」では315/320セル、高負荷・全開時の「FUEL MAP 5」では313/320セルが異なっています。
つまりVTEC作動時の燃料マップは、負荷にかかわらず、ほぼすべてのセルでATとMTの設定値が異なっています。 高速カムのリフト量、作用角、オーバーラップに大きな違いがあることとも、つながりがありそうです。

例外的なのが、VTEC非作動時の高負荷・全開時に使われる「FUEL MAP 3」です。
ATは低速側のインテークカムのリフト量がMTより0.3mm大きいにもかかわらず、「FUEL MAP 3」は320セルすべてがATとMTで完全に一致しています。
これに対して、通常走行時の「FUEL MAP 1」と「FUEL MAP 2」にはATとMTで一定の違いが見られます。 同じく低速カムを使う領域の「FUEL MAP 3」が完全に一致していることを考えると、「FUEL MAP 1」と「FUEL MAP 2」の違いはカムプロフィールの差だけでは説明できず、通常走行時の運転条件の違いも設定に反映されているのかもしれません。

ATとMT 燃料マップの相違率
燃料MAP 定義 意味 相違セル数 相違率
FUEL MAP 1 FUEL MAP1 Part Throttle 通常走行時 82 / 320 25.6%
FUEL MAP 2 Part Throttle, EGR Active 通常走行・EGR作動時 50 / 320 15.6%
FUEL MAP 3 Power Enrichment and WOT 高負荷・全開時 0 / 320 0%
FUEL MAP 4 Part Throttle, VTEC Active 通常走行・VTEC作動時 315 / 320 98.4%
FUEL MAP 5 Power Enrichment and WOT, VTEC Active 高負荷・全開・VTEC作動時 313 / 320 97.8%

VTEC作動時の燃料マップを全域で比較

日本仕様のAT車とMT車について、「FUEL MAP 5 - Power Enrichment and WOT, VTEC Active」の全320セルを比較しました。このマップは回転数20段階、負荷0~100%の16段階で構成されています。下表に、MT車のマップ値からAT車のマップ値を引いた差をまとめました。

※ 表の数値は「MT − AT」で算出した燃料マップ値の差です。マイナスはAT車、プラスはMT車のマップ値が大きいことを示します。また、表にはVTECが作動しない回転数のセルも含まれます。

「FUEL MAP 5」ATとMTの差
回転数0.0%9.4%18.8%25.1%31.4%37.6%43.9%50.2%56.5%62.7%69.0%75.3%81.6%87.8%94.1%100%
500-9.6-67.2-128.0-128.0-220.8-297.6-380.8-454.4-534.4-672.00.00.00.00.00.0-227.2
1000-12.8-70.4-137.6-137.6-233.6-316.8-409.6-486.4-569.6-720.0+233.6+240.0+284.8+272.0+288.0+76.8
2500-12.8-86.4-163.2-163.2-281.6-380.8-489.6-585.6-684.8-864.0-297.6-172.8-48.0+185.6+518.4+636.8
4000-342.4-380.8-188.8-272.0-352.0-377.6-396.8-265.6-441.6-406.4-374.4-275.2-172.8-284.8+214.4+624.0
4600-358.4-403.2-211.2-224.0-230.4-227.2-220.8-345.6-470.4-454.4-441.6-569.6-243.2-320.0-515.2-534.4
4900-400.0-486.4-339.2-438.4-534.4-512.0-486.4-524.8-560.0-624.0-691.2-569.6-694.4-768.0-729.6-432.0
5200-409.6-480.0-291.2-326.4-355.2-358.4-355.2-435.2-515.2-598.4-681.6-899.2-806.4-899.2-915.2-844.8
5400-412.8-473.6-272.0-320.0-361.6-396.8-432.0-483.2-537.6-550.4-729.6-672.0-630.4-675.2-758.4-713.6
5600-403.2-460.8-246.4-278.4-307.2-339.2-368.0-387.2-409.6-505.6-515.2-467.2-416.0-601.6-601.6-531.2
5800-425.6-492.8-294.4-294.4-294.4-316.8-332.8-400.0-467.2-457.6-454.4-457.6-460.8-492.8-630.4-691.2
6000-396.8-435.2-188.8-198.4-204.8-272.0-336.0-313.6-300.8-313.6-508.8-560.0-608.0-556.8-774.4-912.0
6200-393.6-422.4-169.6-160.0-147.2-214.4-281.6-300.8-320.0-448.0-556.8-582.4-608.0-480.0-646.4-697.6
6400-339.2-332.8-41.6-41.6-35.2-60.8-86.4-124.8-57.6-9.6+35.2-28.8-92.8+51.2+54.4+163.2
6600-304.0-272.0+41.6+19.20.0-12.8-22.4+12.8+57.6+80.0+105.6+147.2+192.0+236.8+454.4+777.6
6800-297.6-252.8+86.4+83.2+83.2+64.0+44.8+99.2+115.2+163.2+211.2+265.6+323.2+380.8+403.2+601.6
7000-281.6-227.2+124.8+25.6+150.4+76.8+64.0+51.2+115.2+195.2+246.4+355.2+460.8-428.8-454.4-320.0
7200-259.2-188.8+172.8+51.2+166.4+204.8+166.4+131.2+348.8+416.0+393.6+448.0+505.6+598.4+707.2+976.0
7400-262.4-208.0+124.8+112.0+166.4+217.6+249.6+284.8+400.0+438.4+496.0+492.8+492.8+550.4+636.8+1257.6
7600-236.8-176.0+160.0+134.4+204.8+272.0+352.0+432.0+419.2+502.4+595.2+579.2+566.4+582.4+649.6+883.2
8500+211.2+236.8+224.0+371.2+134.4+243.2+236.8+268.8+291.2+294.4+217.6+166.4-121.6-54.40.0+249.6

負荷と回転数によって変わるATとMTの差

全体として、高負荷側では中回転域でAT車、高回転域でMT車のマップ値が大きくなる傾向が見られます。低負荷側ではAT車のマップ値が大きいセルが目立ち、4,000~6,200 rpmの0%負荷ではMT車の値が約30%以上小さくなっています。ただし、これはマップ値の比率であり、実走行時の噴射量が同じ割合で異なることを示すものではありません。
高負荷側の87.8%、94.1%、100%負荷では、4,600~6,200 rpmでAT車の値が一貫して大きく、5,200 rpmの3列平均では約7.5%の差があります。6,400 rpm付近で差はほぼなくなり、6,600~6,800 rpmではMT車の値が平均約4%大きくなります。7,000 rpmで一時的にAT車の値が大きくなるものの、7,200~7,600 rpmでは再びMT車の値が平均約6~7%大きくなります。

※ マップ値の差を、そのまま吸入空気量やトルク、出力の差として解釈することはできません。

回転数におけるカムプロフィールとマップ傾向
領域 カムプロフィール FUEL MAP 5の傾向
4600~6200rpm AT高速カムは小リフト・短作用角AT側MAP値が約4~8%大
6400rpm付近 - ほぼ同等
6600~6800rpm MT高速カムは大リフト・長作用角 MT側が約4%大
7000rpm - AT側が約3%大
7200~7600rpm MT高速カムは高回転型 MT側が約6~7%大
ATとMTの点火時期マップ比較

次に、点火時期を比較します。
XDFで定義されている点火時期マップは3種類で、燃料マップと同じく、それぞれが 20×16 のセル(合計320セル)で構成されています。

点火時期テーブル1 メイン 
Ignition Timing Table 1 Main
NSX 純正ECU ROMデータ点火時期テーブル1 メイン(MT)

点火時期テーブル1 メイン(MT)

NSX 純正ECU ROMデータ 点火時期テーブル1 メイン(AT)

点火時期テーブル1 メイン(AT)

点火時期テーブル2 EGR作動時 
Ignition Timing Table 2 EGR Active
NSX 純正ECU ROMデータ 点火時期テーブル2 EGR作動時(MT)

点火時期テーブル2 EGR作動時(MT)

NSX 純正ECU ROMデータ 点火時期テーブル2 EGR作動時(AT)

点火時期テーブル2 EGR作動時(AT)

点火時期テーブル3 VTEC作動時 
Ignition Timing Table 3 VTEC Active
NSX 純正ECU ROMデータ 点火時期テーブル3 VTEC作動時(MT)

点火時期テーブル3 VTEC作動時(MT)

NSX 純正ECU ROMデータ 点火時期テーブル3 VTEC作動時(AT)

点火時期テーブル3 VTEC作動時(AT)

点火時期の違いはEGR作動域のみ

点火時期テーブルをAT車とMT車で比較すると、通常時(Ignition Timing Table 1)とVTEC作動時(Ignition Timing Table 3)は、それぞれ320セルすべてで値が一致しています。 一方、EGR作動時(Ignition Timing Table 2)は、1,460~3,400 rpm、負荷約25~63%の範囲にある54セルで差がありました。
VTECのカムプロフィールはAT車とMT車で大きく異なりますが、VTEC作動時の点火時期テーブルは共通です。 違いがあるのは、低~中回転域でアクセルを部分的に開けている領域です。ATとMTそれぞれの巡航時の運転状態に合わせて、調整しているのかもしれません。今回比較したテーブルでは、それ以外の点火時期の設定は共通でした。

ATとMT 点火時期マップの相違率
点火時期マップMAP 定義 意味 相違セル
Ignition Timing Table 1 Main 通常時 0 / 320
Ignition Timing Table 2 EGR Active EGR作動時 54 / 320
Ignition Timing Table 3 VTEC Active VTEC作動時 0 / 320
日本仕様と米国仕様の燃料マップを比較

比較した燃料マップはすべて一致

NSX Primeから入手した「NSX91M OEM.bin」を使って、日本仕様と米国仕様の燃料マップを比較しました。その結果、FUEL MAP 1~5 はMT、ATともに、各320セルすべてで値が一致しました。
米国仕様にはギヤ比や使用燃料などの違いがありますが、少なくとも今回比較した燃料マップの数値には、その違いは表れていません。 ATとMTの比較で違いが見られたVTEC作動時の中回転域も、日本仕様と米国仕様の間では同じ値でした。

日本仕様と米国仕様の燃料マップの相違セル数
燃料MAP MT AT
FUEL MAP 1 0 / 320 0 / 320
FUEL MAP 2 0 / 320 0 / 320
FUEL MAP 3 0 / 320 0 / 320
FUEL MAP 4 0 / 320 0 / 320
FUEL MAP 5 0 / 320 0 / 320
日本仕様と米国仕様の点火時期マップを比較

点火時期マップは大きく異なる

燃料マップとは対照的に、点火時期マップには大きな違いがあります。
特にVTEC用の「Ignition Timing Table 3」では、MTで242/320セル(75.6%)、ATで245/320セル(76.6%)が日本仕様と米国仕様で異なっています。 燃料マップが5種類すべて完全一致なのに対し、点火時期マップは大部分が変更されているわけです。

点火時期マップ - 相違セル数
点火時期マップ MTでの差 ATでの差
Table 1 Main 227 / 320 227 / 320
Table 2 EGR Active 199 / 320 189 / 320
Table 3 VTEC Active 242 / 320 245 / 320

日本仕様では、AT車とMT車でVTECのカムプロフィールが異なるにもかかわらず、VTEC作動時の点火時期テーブルは全320セルで一致しています。 一方、米国仕様では同じテーブルの29セルに差があり、VTEC作動時の点火時期をAT車とMT車で一部変えていることが分かります。

VTEC作動時点火時期マップ - ATとMTの差
仕様ATとMTの差
日本仕様0 / 320
米国仕様29 / 320

VTEC作動時の点火時期の違い

日本仕様と米国仕様のMT車について、VTEC作動時の点火時期テーブル(Ignition Timing Table 3)を比較しました。
日本仕様は高負荷側ほど進角が大きく、100%負荷の4,600~7,600 rpmでは、すべての回転数で米国仕様より3.50~5.75°進角しています。
一方、4,600~5,600 rpmの低・中負荷側には米国仕様の方が進角しているセルもあり、負荷によって、どちらの仕様が進角しているかが変わります。

※ 表の数値は「日本仕様の点火時期 − 米国仕様の点火時期」で算出しています。 また、プラスの値は日本仕様の方が進角していることを示します。

VTEC作動時点火時期マップの比較
回転数0.0%9.4%18.8%25.1%31.4%37.6%43.9%50.2%56.5%62.7%69.0%75.3%81.6%87.8%94.1%100%
5000.00°0.00°0.00°0.00°0.00°0.00°0.00°-0.50°-0.75°-1.25°-1.00°0.00°+1.50°+2.75°+3.50°+3.50°
10000.00°0.00°0.00°0.00°0.00°0.00°0.00°+0.50°+1.75°+1.75°+1.75°+3.00°+3.75°+5.25°+5.25°+6.75°
2500-0.50°-0.50°-0.50°-0.50°-0.50°0.00°+1.25°+1.50°+2.00°+2.00°+2.00°+1.75°+1.25°+1.75°+2.75°+4.25°
40000.00°0.00°0.00°+0.25°-0.25°-0.25°-0.25°0.00°+0.25°+0.50°+0.25°0.00°+0.25°+1.75°+2.00°+3.50°
4600-2.50°-2.50°-2.50°-2.50°-2.25°-2.00°-1.75°-1.25°-1.00°-0.50°0.00°+0.25°+0.50°+2.75°+2.75°+4.25°
4900-2.00°-2.00°-2.00°-2.00°-1.75°-1.50°-1.25°-0.75°-0.50°-0.25°+0.25°+0.25°+0.50°+2.75°+2.75°+4.25°
5200-1.25°-1.25°-1.25°-1.00°-1.00°-0.75°-0.50°0.00°+0.25°+0.50°+0.75°+1.00°+0.75°+2.75°+2.75°+4.25°
5400-2.25°-2.25°-2.25°-2.00°-2.00°-1.75°-1.50°-1.00°-0.75°-0.50°-0.25°0.00°-0.25°+1.75°+2.00°+3.50°
5600-2.25°-2.25°-2.25°-2.00°-2.00°-1.75°-1.50°-1.00°-0.75°-0.50°-0.25°0.00°-0.25°+1.75°+2.00°+3.50°
58000.00°0.00°0.00°+0.25°+0.50°+0.50°+0.75°+1.25°+1.50°+1.50°+1.75°+2.00°+1.75°+3.75°+4.00°+5.50°
60000.00°0.00°0.00°+0.25°+0.50°+0.75°+1.25°+1.25°+1.25°+1.00°+1.25°+1.25°+1.00°+2.75°+3.25°+4.25°
62000.00°0.00°0.00°+0.25°+0.50°+0.75°+1.00°+1.00°+0.75°+0.50°+0.25°+0.25°0.00°0.00°+1.50°+5.00°
64000.00°0.00°0.00°0.00°+0.50°+0.75°+1.00°+0.75°+0.50°0.00°-0.25°-0.50°-0.75°0.00°+1.50°+5.00°
66000.00°0.00°0.00°0.00°+0.50°+0.75°+1.00°+0.75°+0.50°0.00°-0.25°-0.50°-0.75°0.00°+1.50°+5.00°
68000.00°0.00°0.00°0.00°+0.50°+1.00°+1.25°+1.00°+0.75°+0.25°0.00°-0.25°-0.50°+0.25°+1.75°+5.25°
70000.00°0.00°0.00°0.00°+0.50°+1.25°+1.75°+1.50°+1.25°+0.75°+0.50°+0.25°0.00°+0.75°+2.25°+5.75°
72000.00°0.00°0.00°0.00°+0.50°+1.25°+1.75°+1.50°+1.25°+0.75°+0.50°+0.25°0.00°+0.75°+2.25°+5.75°
74000.00°0.00°0.00°0.00°+0.50°+1.25°+1.75°+1.50°+1.25°+0.75°+0.50°+0.25°0.00°+0.75°+2.25°+5.75°
76000.00°0.00°0.00°0.00°+0.50°+1.25°+1.75°+1.50°+1.25°+0.75°+0.50°+0.25°0.00°+0.75°+2.25°+5.75°
85000.00°0.00°0.00°0.00°+0.50°+1.25°+1.75°+1.50°+1.25°+0.75°+0.50°+0.25°0.00°+0.75°+2.25°+5.75°

オクタン価との関連

この結果から考えられるのが、日本仕様と米国仕様で想定されていた燃料の違いです。
一般に、オクタン価が高くノッキングを起こしにくい燃料ほど、ノッキングが起きない範囲で点火時期を進めやすくなります。
今回のROM解析では、日本仕様と米国仕様で燃料マップが同一である一方、点火マップには大きな違いがあり、特にVTEC作動時の高負荷域では日本仕様の点火時期が大幅に進角されています。
こうした違いには、それぞれの仕様で想定されていた燃料のオクタン価が関係しているのかもしれません。

ただし、ROMデータの比較だけでは、設定が異なる理由までは分かりません。 点火時期の違いを考えるうえで、燃料のオクタン価は一つの手がかりになります。
燃料以外の条件も含めて、メーカーがどのような理由で設定を変えていたのかは、今回の解析だけでは判断できません。

※ オクタン価との関連は、ROMの解析結果から考えたものです。 メーカーが設定の理由を説明した資料は確認していません。排出ガス規制や認証条件、燃料の成分など、日本仕様と米国仕様のほかの違いが影響している可能性もあります。

ATエンジン+MT ECUでは何が起こるのか
ATとMTの違い まとめ
項目・回転領域ATMT
非VTEC INリフトMTより0.3mm大きいATより0.3mm小さい
非VTEC WOT FuelMTと同一ATと同一
Main点火MTと同一ATと同一
VTEC INリフト9.5mm10.2mm
VTEC IN作用角215°230°
VTEC EX作用角215°225°
VTECオーバーラップ0°10°
VTEC Fuel 4600~6200rpm相対的に大きい相対的に小さい
VTEC Fuel 7200~7600rpm相対的に小さい相対的に大きい
日本仕様 VTEC点火MTと同一ATと同一
レブリミット関連7500rpm側の設定あり8000rpm側の設定あり

ここまでの結果を、ATからMTへ換装した車両に当てはめてみます。ATエンジンにMT用ECUを組み合わせても、VTEC非作動時の全開用燃料マップと通常時の点火マップは共通なので、この領域ではAT用とMT用でマップ値に違いはありません。
一方、VTECが作動すると、ATの高速カムに対してMT用のFuel Map 4/5が使用されることになります。 日本仕様ではVTEC作動時の点火マップも共通です。そのため、今回確認した主要マップの中で最もはっきり違いが出るのは、VTEC作動時の燃料マップです。
さらにAT用バルブスプリングを残したままMT ECUを使用すると、AT側に設定されている7500rpmを超えて、MT用のレブリミットまで回せるようになる点にも注意が必要です。

カムプロフィールと燃料マップを合わせて見ると、AT/MTのエンジン特性の違いも見えてきます。 AT用カムは低速側のインテークのリフト量がMTよりわずかに大きい一方、VTEC作動時にはリフト、作用角、オーバーラップがMTより抑えられています。 燃料マップもこれに対応するように、VTEC作動後の4600~6200rpmではAT側の設定値が大きく、7200rpm以上ではMT側が大きくなっています。
このことから、AT仕様はVTEC作動後の中回転域側、MT仕様はより高回転域側を重視した特性のように見えます。 カムプロフィールと燃料マップの両方に、こうした傾向が見られたのは興味深いところです。ただし、マップ値だけで実際のトルクや出力の違いまで判断できるわけではありません。

03 純正ECU ROM解析