亜鉛メッキ+黒色クロメート
中古で購入したフロントキャリパーは錆が出ていないものの、メッキが退色し、ところどころ剥げもあったので、リフレッシュすることにしました。
表面処理の方法としてまず考えたのが再メッキです。
純正キャリパーは、亜鉛メッキの上に黒色クロメートが施工されていると考えられます。個人で依頼できる業者を探して見積りをとってみたところ、メッキ剥離、亜鉛メッキ、六価黒色クロメートの施工で、概算44,000円(左右1式、送料別)でした。
純正新品同等の見た目になるのはよいのですが、黒色クロメート層は意外に弱く、経年劣化で退色したり剥げたりしてしまうので、実際に艶のある真っ黒な状態を保っている車両を見たことがありません。
思ったより価格が高かったということもありますが、耐久性を考え、他の手段も検討してみることにしました。
純正メッキ参考写真(新品購入したリヤキャリパー)
ガンコート(GUN-KOTE)
前から気になっていたのが「ガンコート」。
1液性ですが、高温で焼くことで高強度の塗膜を形成する製品です。
YouTubeなどで公開されている耐久テストで性能を調べてみると、相当な強度があることが分かり、長期間艶を維持してくれることを期待して、ガンコートを使用してみることにしました。
ガンコートは
CARVEKopen_in_new
というサイトで扱われており、通販で購入できます。
- 実際に塗ってみないとわかりませんが、黒色クロメートに近いのは少し艶がない黒だと考え、「Flat Black」というカラーを選択しました。
容量は最も小さい500ccを選択。価格は送料込みで8,690円でした。
卓上型サンドブラストキャビネット
ガンコートの密着性を上げるには鉄地肌にする必要があるので、やはりサンドブラストが必要です。
以前、鉄製のサンドブラストキャビネットを所有していたことがあるのですが、使用頻度が低く、邪魔になって手放したという経緯があるので、過去の反省を踏まえ、ガンコートを施工するパーツが入る最小限の大きさという条件で、適切な商品を探してみました。
- 購入したので、イリイ 軽量卓上型サンドブラストキャビネット TR-313SBという商品で、本体が樹脂製で非常に軽く、持ち運びが簡単な小型キャビネットです。
メーカーサイトでは本体重量8.4㎏となっていますが、手で持った感じは非常に軽く、中にある程度のブラストメディアを入れた状態でも問題なく持ち運べそうです。
使用しない時の片付けが楽だということもありますが、大きなコンプレッサーがある場所に持って行って使うこともできるというメリットがあります。
ヤフオクで新品を購入し、価格は送料込みで14,588円でした。
イリイ 軽量卓上型サンドブラストキャビネット
イリイ 軽量卓上型サンドブラストキャビネット 付属品
- キャビネットを開けると中に付属品が入っています。
サンド吸引用パイプ付きのブラストガン、ノズル4種類(φ4、φ5、φ6、φ7)の他、予備の窓用保護フィルム、ボックス用のパッキンなどが入っています。
内部にはLED蛍光灯が設置されており、蛍光灯のACアダプタが付属しています。
キャビネット上側の右側面に外部との取り合いがまとめられており、エア接続口(1/4PT)、ACアダプタの接続ジャック、エアを排出するための通気口があります。
エア接続口はめねじが切られているだけなので、接続するホースに合ったプラグの購入が必要です。
通気口の内側にはエアフィルターが設置されており、粉塵が外に出ないようになっていますが、掃除機などで集塵した場合はすぐに詰まってしまうので、取り外して使用する必要がありそうです。
焼き付け用オーブン
ガンコートの施工では、指定温度での焼き付けが重要な工程となります。
ネットを見ると、密封した箱の中にヒートガンで送風して焼き付けを行うという方法を使う方もいることが分かりましたが、温度管理が面倒だということと、メーカー指定の温度でしっかり焼き付けを行いたいという思いがあったので、オーブンを購入しました。
ヤフオク、メルカリなどで中古オーブンがたくさん出品されており、必要なのはオーブン機能だけなので、レンジ機能が壊れているものなど、訳あり品であれば格安で購入することもできます。
使い込まれたものなども安価ですが、加熱室内が汚いものは気分的に嫌なので、ある程度綺麗な状態のものを購入しました。
- 購入したのは日立のMRO-VS7という製品で、加熱室の寸法は、幅295mm×奥行316mm×高さ220mmです。
メルカリで送料込み11,000円で購入しました。
日立 オーブンレンジ MRO-VS7
オーブンレンジの加熱室内の状態
- 届いたオーブンレンジの加熱室の状態を確認すると、調理用で使用しているものより遥かに綺麗な状態で、焼き付け専用するには少し気が引けるくらいです。
タニタ 温度計 オーブンサーモ 5493
- 設定温度通りで加熱できているかを一応確認したいので、オーブン用温度計も購入。 購入したのはタニタのオーブンサーモ 5493という製品で、Amazonで送料込み1,027円でした。
購入したエアブラシ クレオス PS-290
エアブラシ クレオス PS-290
ガンコートを塗装する際、スプレーガンのノズル径が重要で、ノズル径が大きすぎると塗料の霧化が悪くなって塗膜が厚くなり、気泡が発生してしまうようです。
ちなみにメーカー推奨のノズル口径はφ0.4~0.6mmです。
ノズル径の小さいスプレーガンもありますが、広範囲に塗るわけではないので、エアブラシを購入することにしました。
- メーカー指定のノズル径に該当するエアブラシを比較検討した結果、クレオスのPS-290というノズル径φ0.5mmの製品の中古品を購入。ヤフオクで送料込み8,330円でした。
OLYMPOSのHP-74Dというノズル径φ0.4mmの製品がリーズナブルでよく使用されているようだったので、有力候補に挙がりましが、OLYMPOSとメーカーはすでになくなっていたため、メンテナンス部品の供給などの安心感を優先してクレオスをチョイスしました。
ブラケットのサンドブラスト
- まずはブラケットからサンドブラスト。
使用したメディアは#120のアルミナサンドで、10㎏分ほど購入。
クロメート層は結構簡単に剥がれるので、脆弱なコンプレッサーでもそこまで苦労せずに剥離することができます。
下地の亜鉛メッキ層は、鉄の素地との見分けがつきにくいので、実際のところ、どの程度残っているのかを判別することは困難です。
亜鉛メッキでも素地調整された状態であればガンコートの密着に問題は起こらないと思われるので、クロメート層に加え、酸化箇所をしっかりと落とすことができればOKとしました。
ブラストガンのノズル径は、本来、供給できるエア量に合わせて選択するのですが、最も細いφ4だと、ほとんどメディアを吸い上げず、太いノズル方がメディアの吸い上げが良好でした。
おそらく、ノズル径が小さいと出口側の抵抗が大きくなり、メディアの吸引に必要な負圧が十分に得られないのだと思います。
径の大きいノズルを使用すると、ブラスト時間は短かくなってしまうものの、メディアがしっかり吸引されて作業がはかどるので、結局、最大径のφ7を常用することになりました。
ブラケットのサンドブラスト完了
- コンプレッサーが脆弱なため、片側1時間くらいかかりました。 スライドピンが刺さるシリンダー内部はマスキングしてクロメートを残した状態にしています。
キャリパーのサンドブラスト
- 続けてキャリパーもサンドブラスト。
片側でブラケット両側分の時間を要する感じでした。 シリンダー内部はマスキングしてクロメートを残した状態にしています。
ブラケットのガンコート塗装
- まずはブラケットを塗装。
園芸用の支柱を折り曲げて塗装用スタンドにしました。
塗装直後の状態だと結構艶があります。
艶消し色は攪拌が不十分だと顔料の沈殿により、艶が出過ぎてしまいます。 数日置いておくと、缶を振っても中のボールがカラカラ鳴らない状態になっているので、しっかりと振って攪拌します(メーカーでは10~15分の攪拌が必要と説明しています)。 - 両側のブラケットのガンコート塗装が完了。
乾燥用にちょうど良さそうと思ってダイソーで購入したキッチン用品のフックの位置ががブラケットの穴ピッチと同じで驚きました。
まるで専用のスタンドのようです。 - キャリパーの塗装。
キャリパーは一旦平面に置いて入り組んだ箇所を塗装した後に、スタンドのぶら下げてその他箇所を塗装しました。
ブラケットのガンコート塗装完了
キャリパーのガンコート塗装
ガンコートをオーブンで焼き付け
100℃で30分のプレベイク
- まずはブラケットの焼き付け作業を行います。
どうやってオーブンの中にセットしようか考えていると、ダイソーのキッチン用品がオーブンの加熱室にジャストフィットのサイズで2度目の驚き。
半艶色は焼き付け換装時に急加熱すると、他の色よりも沸きやすい特性があるそうす。 そこで、メーカーは、本焼き付けの前に60~80℃で30~40分の事前加熱(プレベイク)を行うことでシンナーが徐々に揮発して沸きを防止できると説明しています。
これはオーブンを購入してから気が付いたのですが、購入したオーブン温度設定は100℃以上でしか設定できませんでした。 どうやら一般的な調理用オーブンは100℃未満で温度設定できる製品は少ないようです。
ネットで調べると、同じ理由で100℃でプレベイクを行っている人もいるらいしいということが分かったため、100℃で30分の事前加熱を行うことにしました。
ガンコートをオーブンで焼き付け
- 本焼き付け完了。
100℃で30分の事前加熱を行ったあと、170℃で90分の本焼き付けを行いました。
写真は本焼き付け終了後、しばらく放置した後の状態です。
オーブンの温度設定だけだと、実際に何度になっているかが全く分からないので不安になりますが、一応温度計で確認できるので安心です。 オーブンの設定温度と温度計で測定した実際のオーブン内の温度の誤差は意外と小さく、温度計はほぼ170℃を指していました。 - 本焼き付けが完了したブラケット。
塗装直後と比較して艶が引いて予定通りの質感になりました。 - キャリパー本体も同じ手順で事前加熱と本焼き付けを行いました。
キャリパーは2個同時にぶら下げるのが難しかったので、1個ずつ加熱を行いました。
質感は予定通りで、1回目の作業でうまく行きました。
一液性の塗料で、薄い塗膜を塗り重ねるという仕様のため、失敗しにくいというのはあると思います。
ブラケットのガンコート焼き付け完了
ブラケットとキャリパーのガンコート焼き付け完了
ピストン内側のガンコート塗装
- ピストンの内側は水が侵入して錆びてしまうことが多いので、内側のみマスキングしてガンコートを塗装することにしました。
ピストン内側のガンコート焼き付け完了
- ピストンのガンコート焼き付け完了。写真では影になって分かりにくですが、内側にはしっかりガンコートが施工されています。
キャリパー組み立て完了
- ガンコートした部品と洗浄した部品を使用して組み立てホーバーホール完了。
組み立て工程は難易度は高くなく、他所でも紹介されていることが多いので詳細は省略します。 ブーツへのピストン挿入は、先にシリンダーにブーツをセットしたあとで、指でブーツを広げつつピストンを下端を斜めに押し込むと簡単に挿入できます。 ピストンシールは信頼の信越化学G40を使用しました。 - リフレッシュが完了した状態。
鈍い艶が非常に美しく、純正の黒色クロメートに近い質感です。
鋳造キャリパーの凹凸が目立ちにくい艶消し色である点も綺麗に見える要素かもしれません。 - リフレッシュが完了後の内側の状態。
写真で見ると新品に見えてしまいそうな状態です。
キャリパー組み立て完了
キャリパー組み立て完了
